〈地域に学ぶ集い〉8月5日(日)16:30~18:30

 現地・京都と滋賀が企画した集いが12、本部企画が3、合わせて15の集いが開かれました。全部で280名を超す参加者がありました。なかには、集いのために参加された一般市民の方もおられました。ここでは京都・滋賀企画の12をふり返ります。

①  狂言「柿山伏」-笑いの世界を楽しもう                  講師;清水 鉄郎さん・竹内 秀曜さん(狂言・二人会)

◇「柿山伏」の畑主と山伏のかけあいがおもしろかった。単純化した動作と言い回し、伝統芸能の歴史の重みが感じられました。(感想より)

◇教員をしながら狂言を学び、舞台を踏んでおられるのはすごいなぁと思いました。先生だけあって、基礎をわかりやすく教えられるのは上手ですね。そして狂言師ならではの、授業の中に笑いがあるのはおもしろかったです。(感想より)

◇さすが京都ならではの“集い”で、内容もわかりやすくとても楽しめました。教師自身が様々な表現力を持つことは、授業を楽しく深めるために大切だと思います。(感想より)

◇狂言ワークシートがとても詳しく、授業で使いたいと思いました。(感想より)

②授業で使える仏教の基礎知識                       講師;佐々木 正祥さん(真宗佛光寺派大善院住職)

 実際に真宗佛光寺派のご住職のお話とあって、大変ありがたい印象を受けました。記録者の勤務校が浄土真宗(西本願寺)の学校であるため、内容については、よく理解できました。レジュメの「1 日本仏教における浄土教」の中で、「一向一揆、寺檀制度、廃仏毀釈、戦争協力」の4つの用語を一行でひとつなぎの歴史として語られるところに、ご住職の歴史観を見て取ることができ、興味深かったです。「戦争協力」の反省から、宗教連合が靖国神社に首相が参拝することに反対する声明文を出していることを紹介してくださり、宗教者の皆さんの歴史への振り返り方(歴史認識)に共感できました。

 後半のところで、「せんそうこじぞうの建立」についての紹介がありました。ご住職の大善院では、戦争孤児の一時保護施設「伏見寮」でなくなった子ども達の遺骨・遺髪を保管されてきました。戦後70年を記念して2015年に「せんそうこじぞう」を寺院内に建立されました。デザインを担当した当時の高校生である白石さんからは、「せんそうこじぞう」のデザインの説明と伏見寮の寮歌の紹介があり、寮歌については来場者と一緒に歌うということを提案してくださり、皆さんと歌いました。大学生になった白石さんがご住職と一緒に今回の「地域に学ぶ集い」で発表してくださって、来場者の方の印象にも深く残ったようでした。(田中めぐみさんの記録より)

③You は何しに京都へ?-茶道に息づくグローバリズムを探る         講師;森 温子さん(TeaCeremony CAMELLIA代表取締役)

 森温子さんのお話の中で印象に残ったことは、茶道を通して、世界平和をつくる心を育てる基礎を感じているというものでした。カメリアには、世界各国から観光客が来られます。中には、グループで45分間体験する時に友好国ではない国同士が一緒に茶道を体験することもあり、ひやひやされたこともあるようでした。しかし、体験を終えた後、「本当によかった」と言って帰られていく姿を見られ、とても温かい気持ちになったり考えさせられたりするようです。

 和敬静寂、一座入魂、エンプティマインド、茶道において日々の生活の中で私たちが心に留めておかなければいけない大切なことをたくさん教えて頂きました。森さんをはじめ、カメリアにいらっしゃるスタッフの方々の笑顔や真っ直ぐな姿がたくさんのリピーターを生むのだと思いました。楽しかったです。(山崎かるさんの記録より)

④東寺百合文書から京都を考える                      講師;島田 雄介さん(公立高校教諭)

 はじめはテーマとは関係ない話で始まりました。現在の京都の通りについてや戦時中のことなど。また、江戸時代の間に京都は大きな火事にみまわれ、三度焼失したことなど。そのようなことを引き合いに出しつつ、「日本に京都があって良かった」という広告を揶揄されました。京都があって良かった…否、京都は残っただけなのである。残されただけなのであると。そして、東寺百合文書の話が進むと、報告者の京都愛がよくわかりました。

 京都府が百合文書を購入したとき、世間は「紙くず100箱に1億円を出した」と馬鹿にしました。しかし、そこから数十年して、百合文書は世界記憶遺産に指定されました。当時、まさかそのようなことになるとは予想もされなかったことでしょう。京都府の行動が貴重な史資料の保存につながったのです。これが「日本に京都があって良かった」につながるのかなと勝手に考えた次第です。島田先生の熱い思いが伝わってきました。(長谷川一さん・大島結人さんの記録より)

⑤ 市民の歴史から幕末維新期を考える―京都の歴史を歩く            講師;小林 丈広さん(同志社大学文学部教員)

 柳原銀行資料館ができたことは、その地域からの「部落の歴史について語り合ってもいいんだよ」というメッセージでもあります。部落の歴史について、現地を回る場合、よっぽどその地域と関連性の良好なガイドがいないとできません。そういう意味で、このような資料館ができることは、そこを拠点として語り合う場ができるという重要な意義があります。また、そこを拠点とした語り合いの中から、今村家文書が発見されることになり、地理的には崇仁地区からはなれた場所にあるにもかかわらず、その町づくりに今村家が深く関わっていたことが明らかになりました。

 このように、文書の発見・保存・研究を、地域を主体としておこなって行くことが重要です。美術品などに比べて、古文書はその価値が一見してだれにも分かるものではありません。だからこそ、時間をかけて地域の中で研究がなされていくことが大切です。(佐藤靖子さんの記録より)

⑥旧日本軍が中国(旧満州)で遺棄した毒ガスの被害者と、日本の医者たち    講師;磯野 理さん(京都民医連第二中央病院院長)

  200384日中国黒竜江省チチハル市の建設現場で掘り返されたドラム缶から、カラシ臭い液体が流出しました。旧日本軍が棄てた毒ガス兵器が、今中国の住民を苦しめています。重い症状と生活苦を強いられた被害者と家族たち。

 日本の医者や弁護士が支援に立ち上がりましたが、チチハルでの遺棄毒ガス被曝事件についての日本の東京地裁・高裁判決は、本当に断じて許されないものです。国の法的責任を否定する内容であり、法と証拠に基づいた判決ではなく、世論や政権の意向に導かれた判決です。戦争責任・戦後補償は待ったなしの課題です。(橋本陸斗さんの記録より)

⑦米軍基地下の京都1945年~1958年を考える                講師;大内 照雄さん(京都近現代史を歩く会)

 米軍が進駐してきた後の京都の様子がまさに軍都というべきものでした。京都が米軍のために作りかえられていきました。軍都化した町が、現在はその過去をおくびにも出さずにたたずんでいます。占領下の京都を特集した本や歴史展示を博物館等で見たことがなかったので、とても新鮮でした。

 この分野の研究者は多いのでしょうか。「パンパン」のお話を聞いて、軍と性の関係性を改めて確認しました。米軍占領下の京都が説明されないのは、私も不思議に思っていました。やはり恥の歴史なのでしょうか。(大川沙織さんの記録から)

⑧ ふりそでの少女像をつくる会の若者が語る現代               講師;荒川 清明さん(京都府立大学4回生)他6名参加

20年をこす長い期間にわたりひきつがれてきた取組の全体像を本当にていねいに報告いただき、ありがとうございました。感動しました!平和の文化を創り上げる力はここにあると確信することができました。(感想より)

◇本物の(笑)若者たちが次々と語る言葉に聞き入りました。少女像のことは、募金が始まった時から、吉田先生にお話を伺っていました。長崎に行った時、まっ先に少女像に会いに行きましたよ。(感想より)

◇像を造って終わりではなく、それをいかに平和につなげていくかが大事とする姿勢での活動にはさわやかなものを感じます。同時に力強さも感じました。めげることもあるでしょうが、がんばって下さい。(感想より)

◇内容も素晴らしいと思いましたが、何より若い人々の活動に力をもらいました。大阪府立高校の廃校運動に4年間取り組みましたが、対象校の高校生・保護者が運動に加わってくれ、我々も勇気百倍だったことを思い出しました。(感想より)

⑨ 京都の米軍基地(Xバンドレーダー)反対運動と地域の現状         講師;永井 友昭さん(「米軍基地建設を憂う宇川有志の会」事務局長)

 20132月に経ヶ岬に米軍基地建設が決まってから、これまでに至る経過について住民の目線で語ってもらいました。当初はていねいに説明がされていたことも、年月が経つにつれ、説明もなく行われるようになっていったこと。その事実に対し、抵抗、抗議する手段が住民たちにゆだねられ、行政や司法が頼りにならない現実を知ることができました。

 最近の動きとして、二期工事がなし崩し的に行われ、基地が拡大していくことありきの様子がうかがえること。その様子が外部で十分に議論されず、また情報も伝えられないことに、日米地位協定の持つ本質を考えさせられました。沖縄の米軍基地問題と同様、騒音、軍属車両による事故、何か起こった時の責任があいまいになってしまうこと。具体的な事例から基地をかかえる地域の住民の姿が語られました。(田華茂さんの記録より)

⑩ヘイトスピーチにどう向き合うか?~京都朝鮮初級学校襲撃事件被害者のみなさんと語る~                                講師;朴貞任さん(パク・チョンイム、元京都朝鮮第一初級学校オモニ会会長)、        金志成さん(キム・チソン、元京都朝鮮第一初級学校教務主任)、当時5年生の元児童

◇実体験としての教員の話と母娘の体験。貴重なお話を聞けてすばらしかった。つらいお話を勇気を持って話されたことに心からの敬意を表明したい。共生社会に向けて、ヘイトスピーチのない社会に向けて、連帯の意味を再確認した。私も行動に移したいという勇気をもらい、ありがたかった。未来を見ることができた。(感想より)

◇ヘイトスピーチの実態を生々しく知ることができ、衝撃を受けた。被害学校の教員、保護者、当時の小学生の証言を聞き、改めてこの問題について真剣に考えていきたいと思った。千葉朝鮮学校と知り合い、授業を一緒に考えて行ったり交流したりする機会ができ、朝鮮学校を応援する気持ちを強くしている。朝鮮学校が日本で存在する意味を伝え続けていきたい。(感想より)

◇本当に学ばさせていただいた集いでした。自身は移民の歴史を授業にすることをやっています。日本人もかつて排日運動を受けた歴史がある訳ですが、単に昔つらい目にあったことと同じことをやるのかということでなく、そうした歴史をふまえながら「共生」をどうやって子どもたちと学んでいくか、様々なことを考える機会でした。(感想より)

⑪琵琶湖から考える-若狭原発群に対する湖国の運動             講師;瓜生 昌弘さん(滋賀自治体問題研究所)

 詳しい科学的なデータにもとづいた琵琶湖の現状の話から始まって、滋賀県での脱原発の取組の経過をとてもわかりやすく話していただきました。福島の事故をきっかけに、原発が集中する福井に隣接する滋賀での危機感が高まり、関電に対していち早く仮処分を申請する市民運動がおこったのが滋賀県でした。もし琵琶湖が汚染されるような事故がおこった場合、近畿の水がめである琵琶湖に生活水を依存する関西地域への影響ははかりしれないものがあることに、あらためて思いいたりました。

 安全基準が失効しているにもかかわらず、新基準によって新たな「安全神話」がふりまかれようとしています。大津地裁決定(20163月)の枠組みが覆された大阪高裁決定(20173月)以降の動きに対抗するために、いま一度世論の喚起が必要になっているというお話は、とても切実な響きがこめられていました。(後藤誠司さんの記録より)

⑫専業漁師が語る琵琶湖の水環境と漁業の現況                講師;戸田 直弘さん(琵琶湖の専業漁師)

 琵琶湖固有種の一つであるワタカを起点にして、漁師だからこそわかるエピソードを教えて下さったことが印象に残りました。

 琵琶湖の鮒寿司はワタカ(コイ科の淡水魚、卵をもつフナワタカ)で作られるイメージがあるが、実はニゴロブナ(メス)の肉を使うとか。漁をするには琵琶湖の水質を守る必要があるとか。多種多様な魚がとれるのは琵琶湖のふところの深さとか。魚は「獲ろう」と思うと獲れない。プロの漁師の方のリアルな現場のお話や豊かな魚の知識に圧倒されました。試食もとても美味しかったです。(植田啓生さんの記録より)