2019年6月例会

夏の第71回全国大会(埼玉県草加市にて、83日~5日)で報告予定のレポートを検討する例会が始まっています。先月に続いて、3本が報告されました。

世界の人口問題と日本の少子化

後藤 貴三恵さん(同志社高校)

はじめに この実践の位置づけ

世界の人口は増え続けており、出生率が低下傾向であるとはいえ、依然として高い国もある。それぞれの国が抱える人口問題は様々であり、そこには産業構造や経済発展の度合いと出生率との関係が浮き彫りになってくる。日本の少子化の現状を捉えた上で、少子化の原因について、自分の家族や自分の幼い頃のことを思い浮かべながら、働き方や子育てをしていく上での社会の受け皿の点から探ってみた。

「日本の人口問題」の授業実践

【板書】

少子化 

 平均寿命の延び 

 老年人口 7%~ 高齢化社会 日本では1970年 ドイツでは フランスでは 

     14%~ 高齢社会  199424年後  40年後   126年後

       20%~ 超高齢社会 200713年後 

日本では 

  2度のベビーブーム 

   第一次ベビーブーム(19471949年)団塊の世代 

   第二次ベビーブーム(19711974年)団塊Jr. 

合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの平均数)の低下=少子化(人口維持には2.08人必要) (表は略) 

少産少子化人口の高齢化

生産年齢人口比率の低下経済活動の停滞

            公共負担の増大

少子化が進んだ背景について

5~6人の班で意見を出す→クラス全員の前では言いにくいが少人数だと言える

*自分自身や自分の家族について 

きょうだいの人数 親の働き方 未就学

児の頃(保育園や幼稚園に預けられてい

たか?) 

  祖父母世代 親世代 自分世代のきょう

  だいの数の減少から少子化を実感 

社会環境の変化 

 高学歴 働く女性の増加→晩婚化 体力 

 初婚年齢の高齢化 結婚率の低下(東京が最低) 離婚率の低下 

  核家族 子どもの面倒を誰が見る 周囲のサポート 

 子どもも高学歴教育費がかかる 

それにともなう意識の変化 

   子どもは欲しいが、少なくならざるをえない 

   結婚しなくても幸せになれる 結婚への関心が低下 

   家族を持つことより仕事を続けることを優先 

   仕事を優先させ、子どもをもつことを諦める 

働く環境 

労働条件が悪い 残業 ブラック企業 

非正規雇用不安定 低収入 

仕事の責任

仕事と子育ての両立が難しい 二人の時間がとれない 

産休・育休制度があってもとりづらい マタハラ

家が狭い 

社会の受け皿 

   保育園・保育士などの不足 

   近所づきあい

授業の課題

出生率の低下の原因を様々な側面から掘り下げていくことができた。 

働くこととの関係が特に深いことに気づくことができた。 

どうすれば低下した出生率を回復することができるかを考え、フランスの例をあげて回復につながった政策を学ぶところまでいけなかった。 

家族の多様化、性の多様化、結婚観の多様化など様々な変化に配慮する必要がある。

生徒たちのレポート(一部)

https://drive.google.com/file/d/12MGzbWuxpxTfkDV6dxOqmkkfKKTJgFsL/view?usp=sharing

『大日本帝国憲法』は憲法だったのか?

~「歴史総合」型授業の試み~

町田研一さん(立命館宇治中学校・高等学校)

☆はじめに

2年後の実施に向けて、生徒の学習意欲を喚起できるような「歴史総合」をどのように構想するのかが今の課題です。今年度開設の「歴史総合」(4単位)の後半部分で、実際に「歴史総合」型授業の実践を模索することになりました。そのためにまず新学習指導要領の分析を行い、諸先生方の論考から課題を見つけ出し、それらをふまえて実際の授業細案1コマ分の試案を作成しました。

以下、PDF形式でまとめました。

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平和教育の課題と歴史体験キャンプの意義を考える

大八木賢治さん(元中学校教員)

☆平和教育の問題意識・実践の困難さ

「戦争体験」世代が少なくなり、新自由主義と歴史修正主義の影響が広まりとともに侵略戦争や植民地支配への学習が薄められ韓国や中国への反発が意識的に醸成されています。韓国での「元徴用工判決」への攻撃は、脱植民地化の課題が日本の平和教育の重要な一部であり、人類史的視点による人権意識を基礎にしなければならないことを示しています。公立の小中学校では、カリキュラムの「標準化」が押し付けられ、意識的な平和教育の実践を作り出すことが困難になり、広がっていかない問題があります。

☆平和教育の課題‐「共同」の視点と戦後責任を受け止める力

「共同」を模索することで取り組みがより深く豊かになり、実践そのものが地域や学校全体に支えられ発展していく可能性があります。新自由主義は一人一人を孤立させ、自己責任で自らを縛ると同時に、他人にも自分と同じ判断基準を要求させます。まず「理解」しあうことが、他の人々への肯定感や共感につながり人権意識の基礎が育てられます。「戦争(戦後)責任」は押し付けられるものではなく、受け止めていく課題です。国民の主体的道徳的責任として「戦争責任」を受け止める力が必要です。

☆中高生は長春で東アジアの未来の平和をみた!

◆一人一人が積極的に発言、交流したキャンプ

 中国の生徒「キャンプに行く前は、私は日本人に対して偏見をもっていました。中国では日本のことをあまり知らない人は殆ど日本に対して偏見をもっています。・・・しかし、一緒に六日間過ごすと、私の考えは変わりました。」

 日本の生徒「普段あまり触れあうことがない中国人の方とたくさん触れ合うことができ、自分の価値観とか、中国に対するイメージなどたくさん変化があった。」

 学習だけでなく、六日間のキャンプで共に過ごすことで信頼や共感を互いに育てることができました。

◆共同授業で新たな可能性

「近代中国東北地区と朝鮮における日本の統治」を共通テーマとして、日中韓の教師の共同授業と生徒の討論を通して「東アジアの歴史認識の共有」を具体的な形で深めました。

①韓国教師の授業「満州に行った朝鮮人」

三つの時期区分(19世紀末から・満州事変後・日本の敗戦後)に基づき、「満州」における韓国人(朝鮮族)の歩みについての授業。

②中国教師の授業「近代東北の民族移動」

漢民族の満州への移入、満州事変後の日本人移民の増大、強制連行や土地の取り上げ、日本の敗戦後の日本の「開拓団」への棄民政策と残留孤児・婦人問題など。 

③日本人教師の授業「日本人の<わたし>は謝り続けるべきか?」

旧満州からの引き揚げの時、母親と妹を自分で殺したという悲惨な体験と、子ども時代に中国人の子どもを石で殴っていた加害者としての一面を持つ方の体験を聞く。日本人の多くが中国への侵略戦争に負けたことや加害責任を自覚していないという現状をどう考えるかという問題提起。

◆万人抗から受けた衝撃を未来へ

 200近い白骨遺体が何層にもなって並べられている状況を見た時、何も言えずに凝視するしかありませんでした。中高生は、「万人抗」に日本植民地支配の本質を発見します。ショックな体験ですが、それを自分の問題として受け止められるかどうかです。

 キャンプ後の交流会で「しっかり事実を学ぶ必要がある」「日本の政治家はしっかり誤ってこなかった、今もごまかしている」と語られました。事実をしっかり教えていない日本の教育の現状を変えなければならないと考えるのはキャンプに参加したみんなの共通の思いといえます。

 討論の中で、次のような意見が出されました。主に2つの高校の生徒の参加が多いので、参加者をもっと広げたいが、世論づくりの一端にはなっているのではないか。参加した生徒たちが、それ以後もキャンプにどう関わり、東アジアをめぐる問題にどう向き合おうとしているのかが大事、など。